肥満と薄毛からの脱出!「背水の陣」に直面した中年男の日記

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CODA & PERFORMANCE IN NEW YORK async / 坂本龍一

世界的な音楽家 坂本龍一氏のドキュメント映画である、「CODA」と、200名限定、一夜限りのライヴを行った「PERFORMANCE IN NEW YORK async」の二本立てで、プレミアム上映が11月3日に行われました。だいぶ時間が経ってしまいましたが、その感想を述べさせて頂きます。


まず、「CODA」ですが、これは、坂本龍一氏の2012年から2017年までの私生活や仕事の場に密着した、坂本龍一氏初のドキュメンタリー映画とのことです。

監督は、スティーブン・ノムラ・シブル氏という40代の日系アメリカ人で、エリック・クラプトンドキュメンタリー映画制作にも携わった方です。

坂本氏との出会いは、ニューヨークの教会で開催された、京都大学原子炉実験助教授であった小出裕章氏の講演会で、真剣な表情で講演に聞き入る坂本氏の佇まいを見て感動し、坂本氏のドキュメンタリー映画制作を決意したそうです。

以下、僕なりに、気付きを得たこと・感じたことを思いつくままに述べさせて頂きます。

 

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気付き①


2012年、宮城県名取市で、津波に被災したピアノを坂本氏が弾く場面から、この映画は始まります。見事に調律が狂ってしまい、坂本氏いわく「ピアノの死体のような感じ」であったそうです。

しかし、後に坂本氏はこの発言を撤回します。

坂本氏は、この5年間、特に中咽頭ガンを患った後は、いわゆる「人工的」なものを嫌い、「自然」なものを好む傾向になりました。

音に関しても、こう述べています。「ピアノは所詮産業革命以降の「人工的な」工業製品であり、ピアノの音は奏でても徐々に減衰していずれは消えていってしまう。僕は、いつまでも消えない「永続的」な音に憧れている。それは自然の中にしかないと思う」

「人は皆「人工的」に調律したピアノの音を正しいと思っているが、これは人間が勝手に決めた「調律」に過ぎない。実は津波という「自然」によって調律された、この「津波ピアノ」の音こそが正しいのではないか、僕は今はこのピアノの音がとても心地良く感じる」

この言葉は、初めはあまり理解できなかったのですが、最近は何となくわかるような気がしています。私たちが生活しているこの世の中の多くの物事は人間が作り上げたものであるが、実は「自然」から見ると著しく不合理で、不均衡な物事が多いのではないかと。

例えば、人は皆年を取ると、「老い」を恐れ、アンチエイジングに目覚めて、化粧品を使ったり、食事に気を使ったりすることが多くなりますが、まあそれはそれで悪いことではないのですが、「自然」に任せて、普通に老いることは、実はそれほど悪いことではないのではないか、最近そのように感じています。

 

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気付き②


坂本氏は次のように述べていました。

「あと20年、10年か、ひょっとしたら(ガンが)再発して1年で寿命かもしれないので、余計な事はしたくない。今の人生はご褒美だと思って、後世に遺る作品を作り続けたい」

咽頭ガンを患った後の坂本氏の人生観を如実に表した言葉だと思います。

実は、僕も8年前に悪性リンパ腫という血液のガンを患い、ステージ4まさに余命3ヶ月という究極の経験をしたので、この坂本氏の言葉の意味はよくわかります。

まあ、坂本氏ほどの才能を僕は持ち合わせていないので、坂本氏のような素晴らしい作品を遺すなどということは出来ていないのですが、「時間」というものの大切さはかなり意識するようになりました。

ガンを患ってみると、本当に人生は短いのだということを痛感させられますので、本当に自分が好きな事・やりたい事のみに注力して、「余計な事はしたくない」と本気で考えています。

 

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気付き③


前述しましたが、坂本氏の「自然」の音へのこだわりには凄いものがあります。

深い森の中へレコーダーを持っていって、歩きながら収録し、果ては廃墟のような建物の音を確かめたり、朝早く都会へ出かけていって、雑踏の音を拾ったり、雨が降れば、バケツをかぶりながら、降りしきる雨音をレコーダーに収録したり(この映画のイメージ・フォトになっています)、自然の音にこだわる様々なシーンが散りばめられています。

 

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気付き④


これが、最も言いたかったことですが、坂本氏は非常に「自己肯定感」が強い人だということです。

坂本氏は20代の若い頃から非常な自信家だったそうです。

細野晴臣氏から自宅に呼ばれて、YMOの構想の話をされて、「一緒にやらないか」と勧誘された時も、高橋幸宏氏は、「面白そうだ。やりたい!」と素直に思って、賛成しましたが、坂本氏は、「バイトでやってあげるよ」というくらいの生意気な感じだったそうです。

また、大島渚監督から、「戦場のメリークリスマス」にぜひ俳優で出演してほしいとオファーがあった時も、「音楽もやらせてもらえれば、俳優として出演してもいいです」と答えたそうです。

「別にその頃の自分に自信の根拠はなかったはずだが、当時の自分に会ったら、きっと殴るだろう」と振り返るほど、不遜なタイプだったらしいです。

でも、だからこそ、大きなチャンスを引き寄せてきたのではないかと僕は思っています。

「バイトでやってあげるよ」というくらいの生意気な感じが無ければ、YMOの中で自分の存在感を押し出していくことは出来なかっただろうし、様々なミュージシャンと渡り合えることは無かったと思います。

「音楽もやらせてもらえれば、俳優として出演してもいいです」と答えなかったら、その後の「ラストエンペラー」のオファーはなかっただろうし、映画音楽家としての輝かしいキャリアは築けていなかったかもしれません。

「自己肯定感」が低く、損ばかりの人生を歩んできた自分としては、とても見習うべき人だとずっと尊敬してきました。

 

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まとめ


「PERFORMANCE IN NEW YORK async」につきましては、これは今年3月に発売したばかりの新作「async」の曲のライブとして、楽しめると思います。

坂本氏独りでの演奏ですが、いつものようなピアノの独奏ではなく、「async」の曲を聴けばおわかりの通り、様々な変わった「楽器」を使って、演奏しています。来年1/28からの上映ですので、ここでは詳しいことは割愛させて頂きます。


最後に、坂本氏の2012年から2017年にかけてのドキュメンタリー映画ではありますが、所々に、昔懐かしいYMOのライブ映像、YMO時代の坂本氏へのインタビュー映像、「戦場のメリークリスマス」や「ラストエンペラー」のレコーディング風景などが散りばめられていますので、映像資料価値も高く、そういった面でもとても楽しめる内容となっております。

また、映画館で販売されているパンフレットには、細野晴臣氏、高橋幸宏氏、ジェレミー・トーマス氏の特別インタビューが載っており、とても興味深い話が収めれておりますので、ぜひ買って読んでみてください。

 

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