今年2021年1月9日、三年ぶりに「初春歌舞伎」を観に、新橋演舞場まで行ってきました。
今年は初めて「初春海老蔵歌舞伎」と、「海老蔵」の名前を冠しているところに、市川海老蔵氏の並々ならぬ決意のほどが伺われます。
3年前の2018年正月は、ものすごい人の列で、並々ならぬ混雑でしたが、今年はやはりコロナの影響か、とても人が少ない印象でした。
会場に入りましたが、一席ずつ空けてのレイアウトになっており、観客の僕たちにとっては広々として快適ですが、主催者側にとっては相当な痛手となっているんだろうなあと、容易に想像できました。
16時30分ピッタリに開演となり、最初の演目は、「春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ」」です。
市川右團次が「曽我五郎」、中村児太郎が「静御前」、中村壱太郎が「曽我十郎」を演じました。
あらすじは簡単に言うと、父を討たれた仇敵である源頼朝の重臣である工藤祐経を討つため、曽我兄弟が血気に逸って立ち向かおうとするところを、静御前がなだめすかして、好機を待って本懐を遂げようと決意するというものです。
それを歌舞伎で表現するのですが、3人の舞がとてもたおやかで、素晴らしいものでした。
特に、中村児太郎扮する静御前は、本物の女性を超えた気品が感じられ、女形歌舞伎の素晴らしさを感じました。
曽我兄弟の衣装は長装束で、脚の丈が異常に長く、一歩間違えれば踏んづけてしまいそうで、転びやしないかと、無用な心配をしてしまいました。
「春調娘七種」が終わると、15分の休憩となり、その後、今回のメインの演目である「歌舞伎十八番」の「毛抜(けぬき)」となりました。この演目は、七世團十郎が「歌舞伎十八番」を選定する際に加えられ、様々な俳優によって演じられた歌舞伎の人気演目の一つだそうです。
あらすじは長くなるので、とても簡単に説明します。
小野小町の末裔である小野家にて家宝の短冊が紛失し、また婚儀を予定していた小野家の娘が髪の毛が逆立つ奇病にかかるという、トラブルが続発します。
そこへ、婚約者の文屋豊秀が遣わした使者である粂寺弾正(市川海老蔵)が現れて、次々と事件を解決していくという筋書きです。
あらすじを説明すると、単純ですが、これがまた、とても面白かったです。
この粂寺弾正という人物が、「和製ジェームズ・ボンド」という感じで、とても豪快で、頭が切れるのに、愛嬌がある面白い性格で、なかなか良かったです。
小野家で事情を聞いた弾正は、とりあえず事件が解決するまで、屋敷に滞在することにしました。その間、給仕に来た美男子の使いに心惹かれて口説こうとするが、あっさりフラレたり、その後、お茶の持ってきた腰元巻絹(女性の給仕)も口説こうとするが、フラレて、苦笑して「近頃面目次第もございません」と頭を下げる姿は、さすが海老蔵の演出と感心するとともに、笑ってしまいました。
しかし、その後、ひとりでに動く毛抜や刀の小柄を見て、天井が怪しいと勘づき、事件をまたたく間に解決してしまう姿は、とても格好良かったです。
「毛抜」が大盛り上がりで満場の拍手とともに終わった後、30分の長い休憩となり、その時間を利用して、いろいろとグッズを買い物しました。
休憩が終わった後は、第三部の「お年玉」となりました。
市川海老蔵氏の愛娘である、堀越麗禾ちゃんこと市川ぼたんの「藤娘(ふじむすめ)」です。
舞台一面に、綺麗な紫色の藤の花房を施して、とても幻想的な光景でした。
いつもYou Tubeの「EBIZO TV」を観ているのですが、ここに出てきた麗禾ちゃんこと市川ぼたんは、全く別人のようでした。
とにかく踊りが素晴らしい。
素人目にも、とても難しそうな踊りなのですが、きちんと難なく踊ってみせます。
とても緊張しやすいシャイな性格のようで、一人でこれだけ踊ってみせるのは、さぞかし大変だろうと思います。
妻が双眼鏡で見たら、すましてはいるものの、顔は引きつっているように見えたそうです。
市川ぼたんのたおやかな踊りが終わった後は、最後のトリである「橋弁慶(はしべんけい)」です。
市川海老蔵氏の後継者である息子の堀越勸玄くんが「牛若丸」、海老蔵氏が「武蔵坊弁慶」を演じて、京都の五條橋を舞台に、あの有名な牛若丸と弁慶の出会いを演じる演目です。
You Tubeの「EBIZO TV」でのやんちゃな姿とは違い、七歳の子供ながら、身のこなしは素晴らしく、セリフも流暢で、海老蔵扮する弁慶との薙刀を介した絡みは全く心配なく見ていることが出来て、改めて感心しました。
勸玄くんは、七歳ながら、とても堂々としており、とても自己肯定感が強く、自信があるタイプのようです。
海老蔵氏の育て方が良かったのでしょうか。
千切れんばかりの満場の拍手とともに、二人が退場し、演目はすべて終了しました。
三年前は、観客はみんな海老蔵氏や俳優が出てくる出口で待っていて、海老蔵氏や麗禾ちゃん、勸玄くんが出てくると、割れんばかりの歓声が飛び交って、手を振っていましたが、今回は誰も待つことなく、みんなさっさと地下鉄駅に向かって歩いていました。
なんか、とても寂しい感じがしました。
僕たちが近くのスタバでコーヒーを飲んでいる間、海老蔵氏の乗っている車と思われる黒い大きなワゴン車が高速のインターへ向かっていくのが見えました。
帰宅してから、「市川海老蔵でござりまする」をテレビで観ました。
海老蔵家族のコロナ禍の中での取り巻く状況や、生活が映し出され、先ほどの「藤娘」を演じていた麗禾ちゃんが、海老蔵氏の厳しい指導を受けて、涙を流しながら、練習している姿が映し出されました。
歌舞伎をはじめ、エンタメ業界は本当に大変な状況のようです。
こうやって観に行って、少しでも応援していきたいと思い、コロナ禍の一日も早い収束を願っています。
※追伸
「初春海老蔵歌舞伎」の1月17日(日)午前11時30分からの千秋楽の生配信が決定しました。
1月24日までのアーカイブ配信も行うそうです。
下記からお申し込みが出来ます!
https://www.kabuki-bito.jp/news/6559/