今回は、具体的な飛蚊症を解決するための話の前に、僕が経験した、ある眼科医の診察と、世にも不思議な治療の話をしたいと思います。
いくつかのパートに分けて、順を追ってお話していきますので、長くなりますが、よろしくお付き合いください。
以下は、前回のブログです。
K眼科に、約3時間かかって、電車を乗り継いで、やっとのことでたどり着きました。
JR宇都宮線「自治医大駅」より徒歩3分の場所にあり、小綺麗な平屋建ての建物でした。
中に入ると、それほど広くなないのですが、患者さんは数人で、それほど多くはありませんでした。
それでも結構待たされ、やっと名前を呼ばれて診察室に入ってみると、僕が感銘を受けた本の著者の眼科医Y院長が座っていました。
Y院長は、黒縁のメガネをかけて、額が広い、細身の初老の男性でした。
「ああ、あの本を書いた先生か・・・これでオレも飛蚊症とおさらばできるのかな?」と、とても感慨深いものがありました。
「先生の著書を読みました。一日2万歩を半年間続けて、飛蚊症が治った患者さんがいたのですね。」
と、感激のあまり、そう声をかけたのですが、意外にもY院長はきょとんとして、そのことには言葉を返さず、顕微鏡で僕の目をのぞき込むだけでした。
「飛蚊症ですね。うん、これはいわゆる脳と目との間の信号の伝達ミスが引き起こすんですよね。」
そして、顕微鏡から目を離すと、得意げになって言いました。
「それを治療することが必要ですね。」
「大丈夫です。そういった信号の伝達ミスを防ぐために、身体に特殊な刺激を与える機械を私は発明したのです。すぐ用意しますから、また待合室で待っていてください。」
「へえ、どんな機械なんだろう?」僕はワクワクしながら、そのことを待合室で待っていた妻に話し、待っていました。
しばらくして、今度は処置室に呼ばれ、中に入りました。
処置室は意外に広かったのですが、変なベッドのようなものがあり、看護師にその上に仰向けに寝転がるように言われました。寝転がると、上に手すりのようなものがあるので、しっかりつかまるように言われました。
看護師がベッドについたボタンを押すと、ベッドは上下左右に激しく波打ちました。
しっかりつかまっていないと、振り落とされそうなので、懸命に手すりにつかまって、約5分程度、その状態でした。
「なんなんだろう?これは?」
ベッドの動きが止まり、そこから降ろされると、今度は長いロープが現れました。
ロープは部屋の奥から伸びており、先の方につかむための輪状の取っ手がついていました。
看護師から、スイッチを入れた後、このロープを思いっきり引っ張るように言われました。
スイッチが入ると、結構強い力で引っ張られるので、僕は懸命にロープを引っ張り返しました。
まるで、綱引きのような、筋トレのような感じでロープを引っ張ること約5分、ロープの動きが止まると、今度は部屋の奥へ案内されました。
そこには、寝袋みたいなものが置いてあり、ヘッドフォンのようなものを頭に装着されました。
ヘッドフォンをしたまま、寝袋の中に入りました。
しばらくして、寝袋全体が小刻みに振動し始め、ヘッドフォンからはピーっという信号音が鳴り始めました。
そして、また約5分間その状態が続き、やがて振動は止まりました。
「これで、治療行為は終わりです。また外の待合室で待っていてください。」
「なんだったんだろう?これは・・・」
まるで、大昔のB級のSF映画に出てくるような、「未来の機械」みたいなヘンテコな機械でした。
いや、機械と呼べるのかどうか・・・とにかく「妙」で「ヘンテコ」でした。
しばらくして、診察室に呼ばれ、中に入ってみると、Y院長はゴキゲンな表情で、「どうです?スゴいでしょう?」と聞かれました。
僕は「はあ・・・まだよくわかりません。」と気の抜けた返事をするほかありませんでした。
「この人、本気で言っているのだろうか・・・」
すかさずY院長は、自分は「日本綜合医学会」の副会長で、現代医学では治療が難しいとされている緑内障や黄斑変性症などの難病を、30年以上も前から食事や睡眠・運動を中心とした生活習慣によって治療する「目の綜合医学」を立ち上げて、治癒へと導いてきたことを話し始め、資料を出してきて、説明を始めました。
「一か月後に、東京の市ヶ谷のホールで、学会が行われます。そこで私はスピーチを行います。とても実り多い時間となると思うので、ぜひ来てください。参加費用は8000円ですが、きっと役に立つ情報が満載ですよ。」
「あと、私が調合した特殊な漢方薬を処方しましょう。当院は目の漢方薬の権威です。一か月分ほど処方します。」
そして、会計となり、飛蚊症に関しては自費診療となるとのことで、なんと34,000円も請求されました。
しかし、飛蚊症は基本的に治療できないとされており、一般の眼科に行っても、「治療は出来ません」と追い返されてしまいます。
「この医者を信じるしかないか・・・」
それから一か月間、処方された漢方薬を飲み続けました。
いろいろな生薬が調合された漢方薬が紙製の袋に入って、数珠上につながっていて、一袋ずつ毎日朝夕飲み続けました。
薬はちょっと濃厚な味の、いかにも高価な漢方薬といった感じでした。
しかし、一か月経っても、一向に、目の前に広がる、黒い糸くずやゴミのようなものは、一つも消えることはありませんでした。
「かなりの期間、続けなくてはならないのかな・・・」
Y院長に期待するしか方法がなく、紹介された市ヶ谷での学会に参加してみました。
学会には意外にも多くの人が集まっていて、ホールはかなり広く、結構豪華な会合でした。
受付を済ませると、Y院長が歩いているのが見えました。
僕たちは喜び勇んで、「先生!先日はありがとうございました。飛蚊症を診ていただいた○○です。あれから処方していただいた薬飲み続けています。今日は楽しみにしています。」
しかし、Y院長は僕たちを見るなり、きょとんとした表情となり、なぜかよそよそしく会釈をして、先を急いで行ってしまいました。
「覚えていないのだろうか・・・」
学会では何人もの「権威ある」と称する医学博士がスピーチをし、例のY院長もスピーチをしました。
先ほどとは表情は打って変わって、にこやかに、いかにも「私は目の病気に悩んでいる方々の味方です」と言わんばかりの表情で、堂々とスピーチしていました。
しかし、僕にはY院長が話していることは、なんら心に響きませんでした。
何か、こう凡庸なのです。
玄米の効果が、身体の健康に劇的な効果があるという話ばかりでした。
ありきたりの「キレイ事」みたいな話で、何も具体性がなく、心に引っかかるものがない・・・
薬は電話で注文できるというので、追加で1か月ほど続けてみましたが、一向に効き目は表れませんでした。
「騙されたのかな・・・」
そんな考えが心をよぎり、だんだんヤケクソ気味になってきました。
何もする気が起こらず、会社ではますます冷遇されて、帰宅して夕食もそこそこにして、すぐにベッドに入って眠り、深夜に目を覚ます毎日でした。
そして、シーンとした中、「これからオレはどうなるのだろう・・・」「生きていけるのだろうか・・・」
飛蚊症は治らず、仕事も人間関係もうまくいかず、プライベートも楽しめず、心はかなり疲弊し、自殺まで考えるようになってしまいました。
そんな中、会社の近くの本屋にふらりと入り、一冊の本が目に入りました。
深作秀春氏著作の「やってはいけない目の治療 スーパードクターが教える“ほんとうは怖い”目のはなし」
この本が、僕のその後の人生を変えることになるとは、その時には夢にも思いませんでした。
(次回に続く)
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