昨年2021年11月からDisney+で公開されたビートルズの「Get Back」。
この年末年始休暇を使って、やっと観ました。
三部構成に分かれていて、実に8時間以上の長編ですが、なかなか興味深いことばかりで、本当に面白かったです。
僕は、ビートルズのリアルタイム世代ではなく、この「Get Back Session」を編集して、1970年に公開された映画「Let It Be」が上映された時は、1歳でした。
その後、ビデオテープやDVDで発売されることは無く、海賊版のビデオテープで観ていました。
その時の印象は、真冬の寒々としたバカでかく暗い倉庫のようなところで、4人が緊張感バリバリの状態で、作った曲の演奏をしていて、時には喧嘩をしたりして、とても暗い印象を持っていました。
でも、今回の8時間以上の映像を観て、そんな単純なものではなく、いろいろなエピソードがあったのだなあと思いました。
はっきり言って、高校生あたりのアマチュアバンドの制作風景とさして変わらないのではないか、と思うようなハチャメチャ振りで、爆笑するような場面も結構ありました。
皆様ご存知のサザンオールスターズの桑田佳祐氏も実は類まれなるビートルズ・マニアであり、先日1月8日のラジオ放送「桑田佳祐のやさしい夜遊び」(TOKYO FM)で、「Get Back」特集をやっていました。
今回は、その桑田佳祐氏がラジオで話した、映画の感想や見解で、印象に残ったことをいくつかご紹介したいと思います。
①レコーディング・エンジニア「ジョン・エメリック」から見たビートルズ
まず、ビートルズのデビュー曲「Love Me Do」から、レコーディング・エンジニアとして担当していたジョン・エメリックから見た、「Get Back Session」当時のビートルズのメンバー像をご紹介したいと思います。
ジョン・レノン かぎっぱな(カギのように尖った鼻)で、一番落ち着きがなく、やたらデカい声で話している。
ジョージ・ハリスン 目の上にアオタン(たんこぶ)を作っていた。誰かのファンに殴られたらしい。
リンゴ・スター 小柄なドラマーで、オドオドしていて、やたら口数が少ない。
ポール・マッカートニー 一番冷静であり、ルックスも一番一般受けするタイプ。他の3人にさかんにハッパをかけ、3人も彼の言うことをよく聞いている。
彼が一番大人で、もっともらしいことを言っている。
思うに、リーダーはジョン・レノンということだが、どう見てもリーダーは冷静なポール・マッカートニーのように見える。
しかし、桑田さんはこれに関しては反論していました。
「そんな単純な問題ではないよ。いろんな個性が存在するわけだからね。」
同じグループを運営するリーダーとしての桑田さんならではの見解でしょうか。
②まとまりのないビートルズ
激寒の1月のロンドンの、いかにも寒々とした倉庫の中で、メンバーはレコーディング・セッションをしていたが、とてもやりにくく、メンバー間の関係はギクシャクし、全くテンションが上がらない状態でした。
そんな中、ポールだけは皆にハッパをかけながら、がんばっていました。
そして、ポールは作ってきた曲を持ってきますが、他の3人は作っていませんでした。
そんな中、ポールが私用でいないときに、ジョージがいきなりジョンとヨーコに向かって、「ソロやらない?」と言ったそうです。
「それぞれソロをやらないか?僕はもう10年分の曲のストックがいっぱいあるんだ。」
それに対してジョンは、「こんな状況の時に、そんなこと言うんじゃねえよ!」という表情だったそうですが、何とも生々しいシーンで、ふつうカットされるんじゃないか?と桑田さんは言っていました。
ジョンやジョージが亡くなってしまった今だからこそ、公開できたのでしょうか。
③おとなしいリンゴのたった一言の功績
プロデューサーのグリン・ジョーンズやマネージャーのマルは、しばしば「ショーはどうする?」とメンバーに問いかけました。
ポールの奥さんのリンダ・マッカートニーは、「私はファンだから、やっぱり観てみたい」と率直に言いました。
ジョンは、のらりくらりとかわして、あまり気が進まない表情です。
ポールもはっきりと明言せず、「それは僕が言うことでもないし・・・」と言葉を濁してしまう始末です。
ジョージははっきりと「僕はイヤだね!」と断りました。
その後、セッションの途中でヘソを曲げて「僕はビートルズをやめる!」と言って、飛び出してしまったことを考えると、それまであくまでもジョンやポールの弟分だったジョージの自我が芽生えたということでしょうか。
その後、ジョージはヘソを曲げて出て行ってしまい、ジョンも遅刻したり、来なかったりすることもあり、セッションはポールとリンゴのみでやることが多くなりました。
そんな中、プロデューサーやスタッフたちと話をする場面で、ポールが「仕方がないよ」と言って、ジョンやジョージの悪口を言うこともなく、涙ぐむシーンはとても印象的でした。
そんな状況で、3週間ほど経ったころ、再びライブはどうするか?という問題に直面します。
意見がまとまらず、膠着状態にあった中、ずっと黙っていたリンゴが突然ポツリと「俺やる」と言います。
すると、他の3人は突然のリンゴの一言に面食らってしまい、「オ?オッオー、やろうか、やろうぜ!」と誰ともなく言い出し、一気にかの有名な「ルーフトップコンサート」実現に動き出していきます。
桑田さんは、「リンゴは本当にスゴイ!ドラマーとしても天才だ!」と感心していました。
リンゴのこの一言が無ければ、ビートルズの事実上最後のライブである「ルーフトップコンサート」は実現していなかったでしょう。
④ヨーコへの差別
桑田さんも、この映画を全編観て、ヨーコが頻繁に出てくるので、正直「イラッ」とすることが多かったそうです。
しかし、冷静に考えてみると、これは編集した側の「悪意」なのではないか?と感じたそうです。
ポールの妻であるリンダや、ジョージの妻のパティが登場するシーンは、とても鮮やかで、爽快な感じです。
対するヨーコは、いつもジョンにまとわりついていて、ヨーコがセッションに参加するシーンでは、奇声を発するヨーコの声に、ポールの幼い娘が驚愕するシーンがあります。
また、突然壁に貼ってある和紙に、「春」などと筆で達筆な字を書くシーンがあります。
これらのヨーコの撮り方には、やっぱり編集側の「悪意」を感じると、力説していました。
⑤とても親しみやすいメンバーたち
桑田さんは、この映画を観て、本当に4人はすばらしい素敵な人たちだと言っていました。
途中、生々しい印税の話があるのですが、ジョンが「あいつ(アラン・クラインという悪名高い会計士)に任せると、印税率が上がるらしいぜ!」と他の3人に力説するシーンがありました。
桑田さんはこれを観て、とても親しみが湧いたそうです。
(同じミュージシャンとして、共感するのでしょうか?)
また、メンバーが食べる食べ物がとても粗末であることも言っていました。
僕も感じましたが、とても薄っぺらい茶色く焦げたトーストに、マーマレードを塗るだけで、とてもおいしそうに、満足げに食べていたのです。
それとなんの変哲もないカップに入れた紅茶と、スーパーで売ってそうな普通のビスケットでしょうか。
あのスーパースターで、お金も有り余るほど持っているビートルズが、こんな食事をしているとは!と正直驚いてしまいました。
他にもいろいろと、興味深いことを言っていましたが、長くなってしまったので、ここまでにしておきます。
ご興味がある方は、スマホアプリの「radiko(ラジコ)」で、1月8日付放送の「桑田佳祐のやさしい夜遊び」を聴いてみることをオススメします。
1月15日土曜日まで、聴けると思います。
次回、1月15日も、ビートルズ「Get Back」特集第2弾をやるとのことで、またご紹介します。
※YouTubeもやっておりますので、ぜひ下記のリンクからご覧になってください。