「「松任谷正隆の素」を読んで」前回からの続きとなります。
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4⃣ 外食が怖い
松任谷正隆氏は、意外にも30代くらいまでは、外食がとても怖かったのだそうです。
今でこそあちらこちらのの最先端のオシャレなレストランに行って外食をしていますが、若い時までは気が進まず、もっぱら自宅で食事をしていたそうです。
正隆氏がそうなってしまった第一の原点は、小学校の時の学校給食だったそうです。例によってとてもまずかったらしく、「学校給食」という言葉を聞いただけで胸がムカムカし、胃は拒否反応を起こし、食べ物を受け付けなくなるのだそうです。
これは僕にもよーくわかります。
このまずい給食がどうしても食べられず、次の授業が始まっても1人だけ残されて、給食を食べさせられていたそうです。
その頃の先生はおそらく非常に貧しい戦時中をくぐり抜けた人が多かったと見受けられ、「お米の最後の一粒まできれいに食べなさい。農家の人の血と汗が詰まっているのだから大切な食べ物なんです。」というのが決まり文句だったそうで、世代は違いますが、僕の時代もさんざんそのような言葉を浴びせられ、無理やりマズい物を食べさせられていました。
でも、まずいものはまずいのです。
正隆氏いわく、色々な人間がいるわけで「理性が感性を超えられない人間」だっているわけで、特に小学生は感性の塊です。
このようなことがあったゆえ、正隆氏は集団でご飯を食べるのが嫌いになってしまったそうです。
前回のブログにも書きましたが、半ば登校拒否のようになってしまったのも頷けます。
5⃣ 母に連れていかれたレストラン
2つ目の原因は、意外にも毎週日曜日に正隆氏の祖母と母に連れていかれたレストランでの食事だったそうです。
とても変わった家庭だったようで、母親はほぼ毎日祖母のいる実家に里帰りしていたようで、レストランの食事には正隆氏と弟の2人が連れて行かれ、なんと父親だけ留守番だったそうです。
祖母のしつけはとても厳しかったようで、ナイフとフォークを置いたら給仕が持っていってしまうので、食べ終わるまではナイフとフォークを置いてはいけないと言われていたそうです。
正隆氏は、そのように細かく形にこだわって食べることには、とても抵抗があったようで、非常に苦痛だったそうです。
6⃣ デートでの失敗
そんな状態でしたから、高校に入って彼女ができても、一緒に食事に行くこともできず、悶々としていました。もちろん2人の関係性もなかなか進展する事はなかったそうです。
しかし、とうとう意を決して、クリスマスイブの食事に彼女を誘います。
2人で六本木に行ったそうですが、過去のトラウマの影響で、ものすごく緊張し、胃は重くなり、できれば今すぐ逃げ出したい気分でいっぱいで、とてもデートを楽しむどころではなかったそうです。
それどころか六本木中のレストランがみんな消滅してくれればいい、などと矛盾した考えで頭がいっぱいだったそうです。
結局、どこのレストランにも入ることができず、そのまま彼女とは別れ、自然消滅してしまいました。
その後、また彼女ができることがあっても、食事での失敗が原因で、なかなかうまくいかなかったそうです。
7⃣正隆氏に起こった大いなる変化
そんな正隆氏に変化が起こったのは、これも意外ですが、ユーミンとの結婚式の披露宴でのことだったそうです。
自分のことだから、例によって、またメチャクチャ緊張して、晴れの席で嘔吐…と思っていたそうですが、突然何かが吹っ切れて、料理を美味しく食べられるようになったそうです。
吹っ切れた原因は何だったのか、正隆氏は次のように語っています。
それまでレストランで働いている人たちは、全員自分よりも目上で、はるかに物知りでスマートなマナーを身に付けていると思い込んでいたそうです。
だから、レストランに入ったら、頭のてっぺんから足の先までジロジロと見られて値踏みされる、と信じて疑わなかったそうです。
ところがその日、宴会場のスタッフを改めて観察してみると、全員自分よりも年下かもしれないとふと思い、それで急に美味しく食べられるようになったのだそうです。
8⃣ まとめ
松任谷正隆氏の「外食が怖い」の原因については、多分に親や学校教育が深く関係していると思います。
正隆氏は70歳、僕は50代前半(2022年2月18日現在)で、年代は全く異なりますが、親や学校というものは、子供の感性など微塵も考慮することなく、自分たちの考えやエゴを押し付けるものだと思います。
そう考えると、僕たちの世代以下の親たちは、きちんと子供を見守っている人たちが多く、時代は変わったのだなあとつくづく感じます。
最後に、「外食が怖い」の章の最後に、正隆氏が言っていた言葉が印象に残ったので、ご紹介したいと思います。
「おいしいこととは何だろう?」と、小学生の時代から、そのことに悩み、苦しんできた、正隆氏ならではの含蓄のある言葉です。
「おいしい環境も人それぞれ、場所が違えば味も違う。目の前にいる人が違えば味も違う、と思うのは気のせいじゃない。気のせいじゃないどころか正解そのものだ。どこそこのハンバーグはどこそこのハンバーグに決まっている、味は同じだ、なんて決めつけるやつは、きっと空を見上げれば晴れか曇りか雨、しかないやつだろう。」
「今僕は、明日どこの店がおいしいだろう、ということよりも、明日何がおいしく感じられるだろう、という自分の方に興味がある。」
自分を大切にする正隆氏ならではの言葉ですね。
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