先日7月12日、早稲田大学で行われた、村上春樹presents山下洋輔トリオ再乱入ライブを観に行きました。
前回の続きをお話します。
18時半少し過ぎて、始まりました。
最初は、早稲田大学モダンジャズ研究会所属の学生によるジャズの演奏ライブがあり、
その後、司会の村上春樹氏・坂本美雨氏、作家の小川哲氏が登場し、第2部が始まりました。
山下洋輔トリオの乱入ライブが行われた1969年当時のジャズを取り巻く状況、学生運動の状況など、ゲストとの対談が行われ、20分ほどの休憩をはさんで、いよいよ本命の第3部山下洋輔トリオによる実に53年ぶりの「再乱入ライブ」が始まりました。
山下洋輔氏(ピアノ)、中村誠一氏(テナーサックス)、森山威男氏(ドラムス)の3人が厳かにステージに入場し、山下洋輔氏がピアノの前に座り、何の合図もなく、いきなり演奏が始まりました。
その演奏は、これまでに聴いたことのない、度肝を抜く、とてつもない迫力を持った「爆弾」とでも言いましょうか、思わず呆気にとられてしまいました。
およそ「曲」とは言えない、構成も何もない迫力の即興演奏でした。
激しいピアノとドラムの音のぶつかり合い、そこへテナーサックスのヒステリックでありながらもスピリチュアルな響きを持つ音が絡み合い、「これがあのフリージャズというものか!」と耳の穴に拳を突っ込まれたようなド迫力でした。
山下洋輔氏のピアノを弾く「指捌き」を見ていましたが、あの重い鍵盤をまるでボタンを押すように軽やかにかつダイナミックに弾いているようで、これも度肝を抜かれました。
また、ところどころで「肘打ち」が連発・炸裂していました。
しかし、よくよく耳を澄ませて聴いてみると、初めは山下洋輔氏のピアノは一聴すると全く法則性が無い、いわゆる「メチャクチャ」のように聴こえましたが、この後のアフタートークで村上春樹氏が言っていたように、物語が進行していくような「物語性」を感じました。
また、即興ながら、3人ともお互いの顔を見ながら、曲の進行の行く末をうかがっているような雰囲気は感じられました。
そして、最も印象的だったのは、山下洋輔氏と森山威男氏が迫力ある演奏を繰り返しながらも、お互いの顔を見ながら微笑みを浮かべ、とても楽しそうな表情をしていたことでした。
とても70代の高齢者とは思えない迫力でした。
演奏は全4曲だったと思います。
1曲目の「テーマ」そして2曲目の「木喰(モクジキ)」は、1969年当時の乱入ライブで演奏された曲と全く同じで、そのライブの演奏を収めた「DANCING古事記」というアルバムに収録されています。このアルバムが山下洋輔トリオのファースト・アルバムです。
3曲目はセカンドアルバム「ミナのセカンド・テーマ」に収録されている表題曲「ミナのセカンド・テーマ」、4曲目も同アルバムに収録されていて、当時のライブの最後の曲として必ず演奏されていた「グガン」でした。
ライブ終了後、客席にいた田原総一朗氏が、当時の山下洋輔トリオによる乱入ライブが行われるに至った経緯、その時の過激派の学生たちに取り囲まれた中での決死のピアノの運び出し、過激派の学生たちに取り囲まれながらの緊迫した中での激しくも素晴らしい山下洋輔トリオによる演奏の話が繰り広げられました。
話の内容は、前回のブログに書き記した内容と全く同じですので、ご興味のある方はそちらもご覧になってください。
その後、第4部の山下洋輔氏、村上春樹氏、坂本美雨氏によるアフタートークに移っていくのですが、実はこれが一番面白かったです。
長くなりましたので、その内容は次回のブログでご紹介します。