とうとう手術室に入りました。
前回の続きです。
よく映画やドラマで観る手術室の光景でした。
青い手術着を着た手術スタッフの方が数人いて、
「よろしくお願いします!」
と快く迎えてくれました。
でも、僕の方は2回目の手術とはいえ、緊張はマックスの状態で、凝り固まっていました。
そして、いったん点滴を外され、意外と高い位置にある手術台へと登るように言われ、階段のような段を一つ一つ登って、手術台の上に仰向けに寝転びました。
まるで、まな板の上にある魚のような気分でした。
右脚の付け根部分にカテーテルを挿入するので、確認のため、青い手術着を着た巨漢の眼鏡をかけた女性スタッフの方が、おもむろに検査着の股の部分を広げ、股間が露出してしまったのですが、極度の緊張で全く気にはなりませんでした。
股間の上に薄い布のようなものを被せ、右脚の付け根の部分を入念にチェックされました。
すると、奥の方から手術着と手術帽を身に着けたS先生がやってきました。
「リラポンさん、僕も立ち会いますので、ご安心ください。全身麻酔なので、あっという間に終わっていますよ。」
S先生はそう言って、ニコっと微笑んでくれて、僕はそのおかげでいくらか緊張が和らぎました。
そして、S先生が静かに言いました。
「それでは、これより、リラポンさんの心房細動のカテーテルアブレーションによる心筋焼灼術(シンキンショウヤクジュツ)を行います。」
そして、「手術を担当するSです。よろしくお願いします。」と挨拶しました。
手術スタッフの方は5~6人くらいいたのでしょうか。
「○○を担当する○○です。よろしくお願いします。」と一人一人自己紹介して挨拶しました。
その後、取り付けた点滴から、全身麻酔と思われる薬剤が投入され、僕の身体の中に入っていくのがわかりました。
すると、程なくして、気分がなぜか良くなって落ち着いてくるのがわかりました。
お酒を飲んて、ほろ酔い加減になった時の気分に似ていました。
「けっこう、すぐに効いてくるんですね。」
僕はかたわらにいたS先生にそう言ったのを覚えています。
それが手術前に僕が覚えていた最後の記憶でした。
いきなり、場面が変わり、がやがやと会話のような音が聴こえ、しばらくして口の中に挿入されていた酸素マスクが外されました。
手術室の天井がぼんやりと見え始め、手術スタッフと思われる方から
「無事終わりましたよ。」
と言われたのを覚えています。
手術スタッフもしくは看護師の方から、いろいろと言われていたのを覚えていますが、意識がもうろうとしていて、正直何を言われていたのか覚えていません。
全身麻酔の薬はやっぱりかなり強力だったのでしょう。
しばらくして、そのままの状態で、ベッドごと運ばれ、エレベーターに乗り、病棟に運ばれ、病室に入っていきました。
その間、僕はずっとぼやけて見える天井を見つめたままでした。
「右足の付け根と、首の右側からカテーテルを挿入したので、出血がきちんと止まるまでは絶対安静となります。下半身は絶対動かさないでくださいね。上半身は無理のない範囲で動いても構いませんが、下半身に負担のかからないようにしてください。」
そう言われ、上半身が動かしやすいように、ベッドを少し起き上がった態勢に調整してくれ、物を取りやすいように、物置台を左側の近くまで移動してくれました。
しかし、僕はまだ意識がぼんやりとしたままでした。
とりあえず、僕の心房細動のカテーテルアブレーション手術は無事終わったのでした。
(次回に続く)
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