5日くらい経ってから、やっとU人事部長から返事が来ました。
「お疲れ様です。診断書は確かに確認しました。出来れば今後のことについて話し合いたいので、来週の火・水・木のうちご都合の良い日時で来社いただけますでしょうか」
次週の木曜日の午後5時に僕が出社して、今後のことを話し合うことになりました。
前回からの続きです。
休職してから出社するのは、本当にイヤなものです。
特にメンタル疾患で休職中に出社するのは・・・
今回3回目となりますが、社員たちがデスク上のパソコンに一斉に向かって仕事しているオフィスの入口から入室しなければならず、僕が入室した瞬間にイヤでも誰かと目が合ってしまったりするので、今回も誰とも目を合わせないように下を向いていて、総務部の女性担当者のAさんを見つけると、すぐに声を掛けました。
今回の面談相手のU人事部長を呼びに行ってくる必要があるため、しばらくそのまま待たされ、会議室が空いているかどうかも調べに行くために、更に待たされました。
僕は意地でも誰かと目を合わさないようにするため、いつもは目に入ることもない壁の上の方の社訓のようなものをひたすら見つめて読んでいるふりをしていました。
総務部のAさんが帰ってきたのですが、予約した会議室はまだ他の部署が使用中のようで、このままここで待つかどうか聞かれたので、それはさすがにイヤなので、すかさず外側の来客者用の待合用ベンチに座って待っていると告げ、オフィスを出ていきました。
しかし、来客者用の待合用ベンチの前を運悪く営業部の人たちが通ることになり、その時はもし声をかけられたら、きちんと挨拶しようと心に決めました。
すると、先頭を歩いていたラーメン事業部のW部長が僕の顔を見つけ、「Rさん!」と叫び、小走りで近づいてきて、僕の手を両手で握ってこう言いました。
「Rさん!お久しぶりです!体調は大丈夫ですか?」
「はい、まだ療養中ですが、なんとかやってます」
「無理しないで、ゆっくり休んでくださいね!」
この人は仕事に関しては厳しい人ですが、根はいい人で、こういう時にこうやって温かい言葉をかけてくれるところに、人の本性というのがわかるんだなあ、と改めて思いました。
その次に僕の前を歩いてきたのは、先ほどのW部長の直属の部下で、役職としてはW部長の次のレベルであるエリアブロック長のNさんでした。
この人からはよく仕事上連絡が来ることが多かったので、よくやり取りをした仲で、家主からのクレームなどで一緒に謝りに行ったこともある人でした。
しかし、僕の顔を横目で見るなり、「どーも」と会釈し、「たいへんですよね」とまるで他人事のようにボソッと言って去って行きました。
僕は失望しましたが、こういう時に人の本性が現れるので、それを確認する良い機会だと思いました。
その後、よく仕事上やり取りをしていた営業事務の女子社員2人が現れ、僕の顔をきちんと見て「あっ、お疲れ様です!」と言ってくれました。
そして、60歳を過ぎて定年退職し、今は嘱託社員として働いているCさんが現れました。
この人ともよく仕事上やり取りをしていた仲でした。
「ああ、これはこれはお久しぶりです。お元気ですか?」とまるで形式ばった感じの他人行儀な調子で話しかけてきました。
僕は何と答えてよいかわからず、「ええ、まあ・・」と言葉を濁すだけでした。
こうして、いろいろな人が通り過ぎましたが、まあ、メンタル疾患を患って休職している社員に出くわしたら、どう声を掛けたらよいのか、やっぱりわからない人が多いのは事実でしょう。
僕はあまり深く考えないようにし、「まあ、仕方ない」と思うだけにしました。
そうしているうちに、やっと総務部のAさんが来てくれて、会議室を案内されたのでした。
(次回に続く)