EX THEATER ROPPONGIで行われた辻仁成氏のライブ「アコースティック セレナーデ フロム パリ 2023」を先日観に行ってきました。
辻仁成氏は、20年以上前からパリ在住で、1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞し、ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動する、マルチな大変才能のあるアーティストです。
今回、初めて辻仁成氏のライブを観ることが出来ました。
定刻を約5分程度遅れて開演し、辻仁成氏がさりげなく現れました。
そして、何も言わず、少しばかりギターの手慣らしの演奏をした後、「レイン」「故郷」と立て続けに、アコースティックギターのソロで、弾き語りの熱演を繰り広げました。
その後、最新のインストゥルメンタル曲「祭り」を演奏し、辻仁成氏の代表曲にして、僕も大好きな曲である「空」「ガラスの天井」を間髪入れず、ダイナミックな特有のボーカルで熱唱し、ダイナミックなアコースティックギターソロの演奏を熱演しました。
ただ、この2曲については、ちょっと音程や歌い方を変えたような感じの「ライブ・バージョン」で演奏されました。
一緒に行った妻も言っていましたが、アコースティックギターでここまでダイナミックに大音量で聴かせてくれるアーテイストはなかなかいないと思います。
5曲目の「ガラスの天井」の演奏が終わった後、初めてMCとなりました。
今回の会場「EX THEATER ROPPONGI」の近くのホテルに泊まっているそうですが、その地下駐車場を使わせてもらって、発声練習はしていたのだそうです。
朝4時に起きて、6時から10時までみっちり練習するという「熱血」ぶりです。
「僕は次に歌う『My Funny Valentine』『Sunny』を歌いたいため、みっちり練習したんだ」
ピアノ・ドラム・サックスのメンバーが現れ、『My Funny Valentine』『Sunny』の2曲の演奏が始まりました。
『My Funny Valentine』はジャズ・スタンダードの王道の曲ですが、『Sunny』は藤井風氏もカバーして自身のCDに収録していたソウルフルでアンニュイな曲で、辻仁成バージョンもとても良い感じでした。
曲が終わり、再びMCとなりました。
「しかし、東京は暑いねー!昔はこんなに暑かっただろうか?」
「っていうか、昔っていつのことだよ!」
「この暑さにやられて、身体をやられてしまったんだ」
「声が出なくなってしまったんだよ!」
かなり深刻な状況だったようです。
ライブ前の大変だった状況の告白が続きました。
「Twitterやブログには書かなかったんだけど、本当は血みどろの戦いを繰り広げていたんだよ」
「行きつけの耳鼻咽喉科に行き、これからライブがあるんだけど、どうしよう!って相談したんだ」
「上咽頭炎って診断されて、もうすぐにでも治したいから、ステロイド剤での治療がはじまったんだ。ただ、これがキツくてね・・・・顔がパンパンに腫れてしまったんだ」
双眼鏡越しではありますが、まだその名残が残っているのか、いつもより顔が腫れぼったくなっているようでした。
「リハーサルは3回あったが、初日は声が出ず、自分が悪いのに周りに当たり散らしてしまって、3曲か4曲やって、途中で中止に。僕はやけっぱちになってホテルに帰ってしまったんだ」
「2回目はスタジオに行くことすら出来ないくらい酷い状態になり、バンドだけでの練習で、僕は欠席」
「ゲネプロの時には、なんとか声が出るようになったけど、本調子からは遠かった」
「福岡公演のついでに実家に帰って、母に話したら、『んなら、おじいちゃんにお願いするといいよ』と言われた。実は芥川賞を取る時(海峡の光)も、おじいちゃんにお祈りに行って、受賞が叶ったんだ」
「ほとんど行っていなくて、実に20年以上ぶりに、大川にある勝楽寺、おじいちゃんが建立した白仏(数千体の人骨で作られている)に手を合わせたら、一所懸命『声が出ますように!』ってお祈りしたんだ」
「すると、どうだろう!博多公演ではそれまでの失声が嘘のように見事に声が出るようになり、名古屋公演も無事やり遂げられたんだ!」
何も知りませんでしたが、大変な状況だったんですね。
長くなりましたので、続きは次回のブログで!