先日2023年9月2日、俳優の武田鉄矢氏率いる海援隊の横浜関内ホールで行われたライブを観に行ってきました。
前回の続きです。
最後の曲「新しい人へ」の演奏が終わり、メンバーは両手を上げて観客に挨拶をして、ステージから去っていきました。
しばらくして、再びメンバーは会場に現れ、武田鉄矢氏は深々とお辞儀をして、また長いMCが始まりました。
話は武田鉄矢氏の小学2年生の時の話でした。
武田鉄矢氏は小学生の時から映画が大好きだったらしく、映画を観るためのお金を工面するために、お遣いに行った時のお釣りをごまかしていたらしいのです。
ある日、「村上」という女の子が担任の先生に「チクって」、更に先生もご丁寧に母に「チクった」そうです。
(女の子の実名をいうところが武田鉄矢氏の当時の「憎しみ」を表しているように感じました。結構皮肉たっぷりに話していました)
当然、母は激怒して、竹ぼうきを持ち出して、武田鉄矢氏の背中を何度も何度も思いっきり叩いたのだそうです。
その後、お風呂に入っていたら、母が入ってきて、傷ついた背中を見て、泣きながら、背中を流してくれたそうです。
そして、こう言いました。
「鉄矢!二度とこんなことするんじゃねえよ!」
しかし、母の泣きながらの言葉にも関わらず、ほとぼりが冷めると、結局またお釣りをごまかして、何度も映画を観に行っていたのだそうです。
そして、加山雄三や小林旭などの映画を観ては、心震わせて感動していたのだそうです。
時が過ぎ、武田鉄矢氏は、高倉健主演の「幸福の黄色いハンカチ」に出演して、助演男優賞を受賞しました。
ある日、あるジャーナリストが母を訪問して、インタビューをしたそうです。
そのジャーナリストは言いました。
「高倉健とあれだけ対等に渡り合って、堂々たる演技をして、助演男優賞を受賞したのは、やっぱり幼少の頃から撮影所などに行かせて、演技の勉強をさせていたのでしょうか?」
母は答えました。
「そんなことは一切していないよ」
ジャーナリストは言いました。
「しかし、あれだけの演技をするのであれば、どこかで勉強しないと、あんな演技は出来ないでしょう?」
母は少し考えて、こう言ったそうです。
「鉄矢は、小学生の頃、よくお遣いのお釣りをごまかして、映画を観に行っていた。子供というのは、なかなか自分では説明出来ないが、自分の将来を予見して何かをやることがあるんじゃないかと思う」
「鉄矢もやっぱり自分の将来を予見して、映画を観に行くことによって映画の勉強をしていたんじゃないかと思う」
「子供はこんな感じで、自分の将来を予見して勉強したりするので、それが良いことであれ、悪いことであれ、親はあれこれ言ってやめさせたりするのではなく、子どもを見守ってあげるのが一番いいんじゃないかと思う。それが出来るのは親しかいないから」
武田鉄矢氏は、遠くを見つめる目でこう言いました。
「僕の母親は、本当に教養が無い人でしたが、こんな突拍子も無いことを言う人でした」
「そして、なかなか深い含蓄のあることを言う、不思議な人でした」
話はそれますが、僕の妻が言っていたことですが、武田鉄矢氏は何か面白いことを話そうとしたり、とても伝えたいことを話したいときは、必ず横を向いて話していたということでした。
しかも、必ず向かって右向きと決まっていたとのことでした。
それが武田鉄矢氏の素の姿であり、結構シャイな性格なのだと思います。
MCが終わり、この世知辛い、厳しい世の中を生き抜くため、皆様にエールを送りたい、ということで、朗読が始まりました。
相田みつをの「道」でした。
朗読が終わり、武田鉄矢氏は言いました。
「この厳しい世の中を生き抜いて、再び『スタートライン』に立ちましょう。最後にこの歌を送ります」
「スタートライン」のとてもさわやかな歌と演奏が終わり、武田鉄矢氏はちぎれんばかりに会場の観客に手を振って、中牟田氏と千葉氏と共にステージを去っていきました。
武田鉄矢氏のMCは本当に面白く、今回も笑わせてもらいました。
また、機会があれば、ぜひ海援隊のライブに行きたいと思っています。
僕の記憶で書いたセットリストなので、間違っているかもしれませんが、一応記しておきます。
1.Song For You
2.贈る言葉
3.JORDAN JORDAN
4.曲名不明(学生時代の覚えていないクラスメイトもポツリポツリといる、という内容の歌)
5.ダメージの歌
6.少年期
7.明日天気になれ(新曲・未完成)
8.自画像(中牟田俊男氏作・ボーカル)
10.思えば遠くへ来たもんだ
11.新しい人へ
アンコール
12.朗読「道」相田みつを
13.スタートライン